卒業論文 現代祈祷寺院の機能と構造

信者定着に向けた取り組み

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信者獲得と定着に向けた取り組み 信者定着に向けた取り組み

信者定着に向けた取り組み

 次に、信徒や檀家に定着させるための取り組みについて述べる。獲得の次は、信徒や檀家となった人々をどのようにして信者として定着させるかが重要になってくる。信徒に対しての取り組み、檀家に対しての取り組みについて述べる。

信徒向け
 信徒には大きく分けて二つの種類がある。一つは「特に信仰の篤い信徒」で、もう一つが「それ以外の信徒」である。一つ目の、「特に信仰の篤い信徒」のことをこの寺院では「篤信者」と呼んでいるため、本稿でも以下「篤信者」と記述する。そして、もう一つの「それ以外の信徒」を本稿では便宜上「一般信徒」と記述する。

1.篤信者
 大本山成田山仙台分院が、信仰の篤い信徒向けに行っている行事がある。それは「表彰式」である。表彰式とは、御祈願を多くされた信徒の中で、計○回など回数に一区切りついた信徒を対象に、不動明王の信仰の伝播に寄与したことに感謝の意を表する形で表彰する式である。この式は、この寺院の開山記念日に毎年行われている。
 さて、この式典を行うことで信徒側、寺院側双方にどのようなメリットがあるのだろうか。まず信徒側のメリットについて考える。信徒側にとって、自らの信仰心を表彰されることにどのような意味があるのだろうか。表彰式に参加した三人の信徒の方に対するインタビューから考察する。この三人の方のプロフィールを以下の表に簡単に示す。なお、氏名は本名ではなく名字のイニシャルのみを表記するものとする。

信徒インタビュー対象者
氏名/性別1.Wさん(女性)2.Sさん(男性)3.Aさん(女性)
年齢(代)80代50代80代
信者歴約10年20年以上13年
来山頻度2年前からほぼ毎月1年に1回(お正月)毎月2、3回以上

 この三人の方に聞いた内容は、次の三つである。

  1. 成田山仙台分院を知ったきっかけ
  2. 祈祷をする目的
  3. 表彰式を行うことについての意見
 まず、@成田山を知ったきっかけ について述べる。三人の方のうちWさん、Sさんは昔仙台分院の本山である千葉県の新勝寺にお参りに行ったことから成田山という存在を知ったと言っていた。しかし、Aさんが成田山を知ったきっかけは新勝寺にお参りに行ったからではなく、大本山成田山仙台分院がきっかけである。具体的に言うと、Aさんの義理の甥が仙台分院の近くにある赤門鍼灸柔整専門学校の下見に行った後でAさんと会ったときに、Aさんが甥の肩越しに不動明王の姿を見たことで、そういえばと大本山成田山仙台分院の存在を思い出し、通うようになったのである。住職曰くこのような例がきっかけで信徒になる方は多くはいないそうである。それならWさんやSさんのように「成田山」という名前をそもそも知っていて、仙台にも分院があるということを後で知る人の方がきっかけとしては多いのではないだろうか。
 次に、A祈祷をする目的 について述べる。祈祷の目的に関しては、三人の方に共通して「健康祈願」という特徴が見られた。その中でもWさん、Aさんは病気平癒の祈願をしたのちにこの先も健康であるようにという祈願もしており、信仰の篤さがうかがえる。
 そして最後にB表彰式を行うことについての意見 について述べる。表彰式に関しては、三人の方の意見が同じものとなった。それは、「ありがたい」という意見である。信徒の方々が口をそろえて「ありがたい」という感謝の言葉には二つの背景が考えられる。一つは、「自分の信仰心が認められたことによる感謝」だ。祈祷に来る人の目的は様々だが、その中にはWさんやAさんのように病気の苦しみから解放されるようにという願いから寺院を訪れる人もいる。そのような人々は、長い間病気が治るようにと祈り、治った後も健康であるようにと祈り続けており、信仰を一つの支えとして生きている。しかし、信仰は目には見えない。その目に見えない信仰を、寺院側が「表彰式」という目に見える形で認めることで、信徒側が感謝の気持ちを持つのではないだろうか。
 そしてもう一つは、「寺院との距離を縮められたことへの感謝」だ。Sさんは、「祈祷を何年も続けることで、住職さんに顔を覚えてもらい、以前より親身に話ができるようになった。」という話をしていた。寺院に毎年欠かさず正月に訪れているというSさん一家は「大本山成田山仙台分院に行かないと落ち着かない、安心できない。」と話しており、こちらも大本山成田山仙台分院が心の支えとして機能していることがわかる。そしてその寺院が「表彰式」を行うことで、寺院と信徒との距離がさらに縮まり、これからも親身な付き合いをしやすくなる。そこから生まれる感謝の思いというのが、二つ目の背景であると考える。
 続いて、この節の主テーマでもあるように、信徒として定着させることができるということはこの式典の最大のメリットで間違いない。そして定着する信徒は皆信仰の篤い信徒であるため、信仰を広めることだけでなく信仰を深めさせることも求められる寺院にとってはプラスのことである。特に、インタビュー調査を行ったAさんは前述の「萩の会」の会員であり、自らに起きた体験を不動明王の信仰と絡めて発信する側になっている。Aさんのように、自分の体験を信仰に絡めて広めていこうという気持ちをもった信徒が、これからも信徒であり続けるのは寺院にとっても喜ばしいことだろう。
 このように、信徒側と寺院側それぞれのメリットにより「表彰式」が行われている。

2.一般信徒
 続いて篤信者ではない信徒、すなわち一般信徒向けに行っている定着に向けた取り組みについて論じる。一般信徒に対しては、その規模を考えても表彰式のような行事を行うことができない。したがって、何か別の手段での取り組みを行う必要がある。そこで大本山成田山仙台分院が行っているのが、信徒に適した行事案内を送付するということである。まず、仙台分院では行われる行事を外部向け、内部向けの二つに分けている。外部向けは、初詣やお盆の行事などどのような人でも申し込める行事で、内部向けは、お不動様スス払い(不動明王大仏報道 新聞)など寺院の内部に関わる人しか参加できない行事だ。大本山成田山仙台分院ではこの二つのうち外部向けの行事に参加しやすさのランクをつけている。例えば、初詣における祈祷は最も参加しやすいランクの一つであり、不動宝剣魔除祈祷会における祈祷が参加しやすさとしては最も難易度の高いものとなっている。これらのランク付けされた行事の中から、信徒一人一人に適した行事案内を送付しているのである。
 そこで、約一万人と非常に多い信徒に対してどのようにしてそれぞれに適した行事案内を送っているのかがこの項の鍵となる。その具体的な方法は、信徒が祈祷を申し込む際に提出する申込書を活用することだ。申込書には信徒の名前や祈祷の種類など、祈祷に必要な情報を記入する欄に加えて、大本山成田山仙台分院からのお手紙の御案内を受け取るか、受け取らないかを記入する欄が設けられている。その欄に、「お手紙の御案内を受け取る」と記した信徒に対しては行事案内を送り、「お手紙の御案内を受け取らない」と記した信徒に対しては行事案内を送付しない。そして、どの信徒が現在どのくらい祈祷を行っているかなどの情報をパソコンにデータとして取り込んで管理しているため、信徒一人一人に適した行事の案内(成田山寺院案内)を送ることができるのである。
 この取り組みには信徒を定着させるということ以外にもう一つのメリットがある。それは、信仰の篤い信徒が増えるということである。このような行事は行っているのか、お不動様の信仰に直結する行事は行っているのかなど、信徒から寺院に対してのアプローチによるものだけでは、信仰の篤い信徒はなかなか生まれない。しかし、寺院の方から信徒に対して、それぞれに適した行事案内を送付すればおのずと参加する信徒も増え、信仰も深まる。信仰を広めることも重要だが、信仰を深めることも同時に重要なことだ。したがって、大本山成田山仙台分院が行っている現在の取り組みは信仰の篤い信徒を育てるという取り組みである。

檀家向け
 続いて、大本山成田山仙台分院が檀家向けに行っている取り組みについて述べる。檀家からの収入は、祈願・祈祷によるものに比べて安定しているため長期的な付き合いになるほど寺院の経営も安定する。しかし、現在大本山成田山仙台分院が檀家に対して行っている取り組みは特に存在しない。檀家の獲得に注力しているようであった。

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大本山成田山仙台分院
住所   :〒980-0845 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉33−2
電話番号 :(022)225-8640

  

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