卒業論文 現代祈祷寺院の機能と構造

祈祷寺院考察

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祈祷寺院考察

祈祷寺院考察

 第二章、第三章では経営、信者獲得と定着に向けた取り組みなど寺院の構造に関わる部分について論を進めてきた。ここでは、これらを踏まえて現代の祈祷寺院が持つ機能について論じる。第二章、第三章それぞれで論じた内容の中から、大本山成田山仙台分院が寺院運営や行事などを行う上で持っている共通観念を考察し、檀家制度が施行されていた頃の祈祷寺院と現代の祈祷寺院が信者に対して果たす役割の違いを考察する
 第二章では大本山成田山仙台分院の経営に関わる三つの柱について論を進めてきたが、この三つの柱から、仙台分院が寺院を運営するにあたり重要にしていることをまとめる。この三つの柱から見えてくるものは大きく三つある。その三つとは、「寺院が時代に合わせること」、「相互的なやり取りをすること」、「公益性も重視すること」である。
 まず一つ目の「寺院が時代に合わせること」だ。大本山成田山仙台分院では縁起物、祈願・祈祷に関しては、インターネットを活用することで経営をしてきた。また、墓に関しては少子高齢化や核家族化などの時代に合わせて永代供養墓を開始することで時代に沿った経営をしてきた。このように、現在社会がどのようなものを求めているのか、どのような媒体が主流なのかを考えた寺院運営をすることが重要にとなってくる。この大本山成田山仙台分院の例は、檀家収入のみもしくは祈祷収入のみでは寺院運営が難しくなってきた今日、時代が寺院に合わせるのではなく、寺院が時代に積極的に合わせる姿勢が見られた例である。
 次に二つ目の「相互的なやり取りをすること」について論じる。これは寺院側からの一方的なやりとりではなく、信徒側も絡んだ相互的なやり取りを望んでいるということだ。第三節第二項において記述したが、遠方に住んでいる人でも寺院に来たときと同じ気持ちを持ってもらえるようにと始めた「ネット祈願」、「ネット水子」だが、実際に信徒側が手を合わせて供養をしているのかが目に見えないため、寺院側からの一方的なやり取りで終わってしまう。そのため、人気があったものの寺院の本分から外れてしまうため終了した。水子供養に関しては、一回の供養で終わりというものではなく、頻繁に何度も供養してはじめて供養になるものであるため、寺院側で拝む姿が確認できないこの方法は、たしかに見過ごせないものかもしれない。このように、経営の面からみれば成功していたものの、一方通行のやり取りのように、寺院側の考えに相違する場合は終了するのである。
 そして最後の三つ目は「公益性も重視すること」だ。大本山成田山仙台分院は祈願・祈祷を中心に運営している寺院であるが、その中心としている祈願・祈祷に関わる部分で公益的な活動もしており、それだけ重要視していると考えられる。住職の話のなかで、「宗教法人は税において優遇されているので、その分社会に対して還元したい」という言葉があった。この例はそれを体現した例であるといえる。このような直接寺院の利益にならないことも大切にする方針もこの寺院には見られる。
 したがって大本山成田山仙台分院は、この三つを重要視して寺院を運営していると考えられる。
 第三章では信徒と檀家それぞれの獲得と定着について論じた。これらの取り組みを簡潔にまとめる。信徒に関しては、獲得と定着ともに注力していた。檀家に関しては獲得に向けた取り組みに力を注いでおり、定着に向けた取り組みはまだ行っていなかった。寺院が行っているこれらの取り組みを通じて、筆者は二つの共通した観念があると考察する。その二つとは、「受け身であること」と「的を絞っていること」である。
 「受け身であること」を象徴しているのが、寺院が主な発信手段としているホームページである。テレビCMやラジオなどの能動的な発信手段ではなく、それを知りたいと思っている人に直接的に発信するホームページによる手段を採用しているのは、大本山成田山仙台分院の大きな特徴といえる。ホームページに加えて、テレビのニュースに取り上げられること(不動明王大仏報道 放送)も大本山成田山仙台分院の主な発信手段だが、これに関しても寺院側から取り上げてくれという打診をしているわけではない。こうして取材に来るのもインターネット検索の結果上位にくるような取り組みを行っている賜物であり、決して指をくわえて待っているわけではないのだ。このように受け身とは言ってもただ寺院を求めて誰かが来るのを待っているというわけではなく、未信者やメディアの人々が大本山成田山仙台分院に興味を持ってくれるような取り組みをしている。つまり、やるべきことをやった上での「受け身」なのである。これが一つ目の観念だ。
 そして二つ目は、「的を絞っていること」であるが、大本山成田山仙台分院では、この観念を最重要視していると筆者は推測する。大本山成田山仙台分院の経営戦略はランチェスター戦略であると第二章で記した。「持てる財力及び人力を一点に集中して、そこで他の対抗勢力を圧倒しナンバーワンになること」がこの戦略の原則である。それゆえ、「的を絞っていること」はこの原則通りのことである。それを示している取り組みが随所に見られる。例えば、檀家獲得のための取り組みならば新聞の訃報欄を活用し納骨堂を利用しそうな人々に向けて発信している。また、一つ目で述べたホームページの例もこれに当てはまる。不特定多数の人々に発信するのではなく、検索したワードを知りたい人に対して発信するため的を絞っているといえるだろう。これらのCMや新聞などの広告によるものよりも発信できる範囲は狭まるが、それを必要としている人にピンポイントで情報が届く。よってニーズと情報が合致しやすいためCMなどよりも効率的といえる部分もある。この方針を大本山成田山仙台分院で行っている情報発信の基礎としていることは間違いない。
 最後に、祈祷寺院の役割の比較、大本山成田山仙台分院の経営から見える三つのこと、そして獲得や定着に向けた取り組みの中で推測した二つの共通観念を踏まえて、大本山成田山仙台分院が現代においてどのような形で祈祷寺院として存続させようとしているかについて考察する。
 本稿では祈祷寺院を「寛永八年以降に建立された寺院で、祈願・祈祷を中心に寺院を運営している寺院」と定義し論を進めてきた。寛永八年頃は檀家制度が施行されており、檀家をとって運営する寺院や現世利益などの祈祷を行う寺院など、寺院が行う活動も限定的なものが多かったため、寺院の区別がつけやすかった。しかし、大本山成田山仙台分院に対する調査を進めるにつれて、現代においては一概に「祈祷寺院」などの区別はつけられないと考えた。大本山成田山仙台分院は、「祈祷寺院」として誕生したものの、墓の面にも力を入れ始めている。つまり、現世利益など「生」の部分を中心として成り立ってきたが、墓など「死」に関わる部分も取り入れているということだ。檀家制度が施行していた当時は、寺院は宗教的な役割に加え、現在の戸籍に関わることを把握する役割も兼ね備えていたため、「イエ」単位でどの寺院の檀家に属するかが決められていた。しかし現在は、檀家制度の名残として、当時のまま檀家になっているという「イエ」もあるが、義務ではない。つまり、「イエ」が現在そうだからといって、「個人」もこれからそうである必要はないのである。
 祈祷寺院が増えていったのは、檀家制度が施行されていて新たに檀家を獲得して寺院を運営するのは難しかったからという背景があるが、現代の寺院にはもはやこの背景は当てはまらない。先ほども記述したように、現代では檀那寺を選ぶのは「個人」であり、「イエ」が選ぶという義務がなくなった。それならば、「祈祷寺院」が「祈祷寺院」として存在する理由も同じようになくなる。これに関連して、武井昭氏は現代仏教寺院の時代的課題について次のように述べている。「寺院や僧侶が提供するサービスもコンピュータやニューメディアを利用し、種々のイベントを行い、時代の変化に応じたニーズを充足できなければ、現代から取り残されてしまう。寺院や僧侶の役割を従来のものに限定し、それを固持するならば、それだけ社会全体における寺院や僧侶の占める比重は小さくなる外なくなる。」このように武井氏は、寺院の役割を従来のものに限定するべきではないと指摘している。要するに「祈祷寺院」が檀家をとるような時代になっても不自然なことはないということである。したがって、祈祷寺院として始まった大本山成田山仙台分院が、墓(納骨堂・永代供養墓)の利用を始めたことも不自然ではないのだが、始めたきっかけを住職に聞いた際の、住職の返答が大変興味深かった。第二章でも少し触れたが、「納骨堂や永代供養墓は、祈祷に来て信徒になった方からのご要望であり、あくまで祈祷から派生して生まれたものなので大本山成田山仙台分院では墓の利用をスタートさせた。」という話だ。つまり重要なのは、墓は「死」、祈祷は「生」というような括りではなく、それ自体に祈祷が関わっているか、つまり信徒が関わっているかどうかである。結論として、大本山成田山仙台分院がどのような形で祈祷寺院として存続させようとしているかを考察するならば次のようにいえる。大本山成田山仙台分院は信徒とのつながりの中から生まれた取り組みについて、それらを必要としている人にピンポイントで情報を発信することで信徒、檀家そして未信者のニーズに応えるとともに、インターネットや永代供養墓などその時代に自ら合わせることも重視した寺院運営をすることで、現代において祈祷寺院として存続させようとしていると筆者は考察する。

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